外国人研修生権利ネットワーク設立趣意書
日本には現在、約200万人と言われる外国人が暮らしています。日本政府は、外国人観光客や留学生を呼び込む一方で、日本国内で暮らす外国人に対する管理・監視をかつてないほど強化し、そうした中で特定の宗教や民族に対するゼノフォビア(外国人嫌悪)が広がりつつあります。
今日に至るまで、日本政府は、いわゆる「単純労働者」として外国人を受け入れないとの建て前を崩していません。その一方で、政府は、1990年から外国人研修制度の規制緩和をすすめ、1993年に技能実習制度を創設し、研修生及び技能実習生を低賃金労働者として中小零細企業に送り込む道を開きました。外国人研修生の入国者数は2006年に9万人を数え、現在、15万人を超える研修生・技能実習生が日本の各地で働いています。
外国人研修・技能実習制度は、「国際貢献」や「途上国の人材育成」という理念を掲げながら、実際には建設業、農業、漁業、縫製業、食品加工業など人手不足の分野を中心に、1年から最大3年のローテーション方式の安価な労働力として利用されています。「国際貢献」という目的と安価な労働力供給という実態との乖離は、低賃金での長時間労働、パスポートの取上げ、外出など移動の自由の厳しい制限、不当な「保証金」や「違約金」など、まさに「人身売買」ともいえる著しい人権侵害として表面化しました。
「外国人研修生問題ネットワーク」は、1999年の「移住労働者と連帯する全国フォーラム」の分科会をきっかけに始まり、東京、大阪、福井、長野を中心に、研修生・技能実習生の個別の問題解決と政府への交渉を続けてきました。その結果、当初は「問題があるのは一部の悪質な企業だけだ」と主張していた政府は、多くの受入れ企業が問題を抱えていることを認めざるを得なくなり、企業に対する指導や監督が厳格化されるなどの成果もありました。しかし、第一次受入れ機関や企業の「手口」は法の網目をくぐる一層巧妙なものとなっています。その結果、研修生・技能実習生たちを取り巻く労働環境は、ますます劣悪なものとなり、人権侵害も悪化の一途を辿っています。
2006年から移住労働者の受入れ議論が再び活発になり、その中軸として、技能実習制度を基本とした受入れ形態に注目が集まっています。最近では、厚生労働省の外国人研修・技能実習制度研究会中間報告、経済産業省の外国人研修・技能実習制度に関する研究会とりまとめ、そして法務大臣私案などが立て続けに明らかにされました。
私たちは、研修生・技能実習生に対する人権侵害を放置し、抜本的な見直しがなされないままにそうした受入れ議論が進められることに強い危機感を持ち、改めて、ここに、「まやかし」の外国人研修・技能実習制度に対して反対を表明します。
そして、私たちは、「外国人研修生問題ネットワーク」を「外国人研修生権利ネットワーク」と名称を改め、それぞれの地域、立場での活動をつなぎ合わせ、より一層、外国人研修生、技能実習生の権利保障と制度の見直しを求める活動に取り組むこととしました。
外国人研修生、技能実習生、そしてすべての移住労働者の権利確立を通じて、人々が相互に違いを尊重し、信頼を分かち合う多民族多文化共生社会の確立を目指していきましょう。
以上を以て、私たち外国人研修生権利ネットワークの設立趣意と致します。
2007年6月11日
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